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メイキング・オブ「忍野ノート・ビデオ版」 その4 救世主現る(ヒゲナガの撮影2)
1996年から97年にかけての春と秋。ヒゲナガのハッチが増えてくるこの時期の夕暮れには、必ず三脚を立てて待ち構えることとなった。しかし、撮っても撮ってもなかなか納得のいく映像は得られなかった。 ただ手をこまねいていたわけではない。ヒゲナガのハッチが多そうな場所を転々とし、撮りやすい場所を見極めようとした。これには、実際に夕暮れ時にカメラを構えてみないとわからないことが多かった。カメラを据える位置にしても、できるだけ水面が西空の残照を映す場所を選んだり、実際になんらかの照明設備が近くにある場所を選んだりした。 とにかく最大の問題は光量不足だった。まだ薄明るい時間には、ハッチ数が少なく、構えたファインダーの中になかなかアダルトが入ってきてくれなかった。ハッチの少ない日は論外だが、ハッチの多い日でも、アダルトが水面を歩く姿が増えるころになると、たいがい光量が不足気味になった。こうなると映像が荒れるだけでなく、アダルトが縦方向に、特に遠くから近づいてくるようなケースなどは、オートフォーカスがまったく使い物にならないことがわかった。 それでも1997年の10月末に富士急ホテル前で、それまでで一番程度のいいヒゲナガの映像を撮ることができた。ここは空が開けていて水面の広い範囲が明るかったこと、比較的遠くから、横方向に移動するアダルトの姿を狙えたこと、もちろん羽化数が多かったことも運がよかった。けれど、アダルトがマスに捕らえられるシーンが水面の影の部分に入ってからだったなど、まだ十分に満足とはいえなかった。 ある日新聞に載ったソニー製のDVカムのニュースを見た。はっきりと記憶していないのだが、なんでも赤外線撮影装置付きのそのDVカムを使うと、白っぽい水着が透けて写り、盗撮に利用されているというものだった。よく調べてみると、その赤外線撮影装置は「ナイトショット」と呼ばれ、夜の闇の中でも撮影を可能にする、という。こりゃあ使えるんじゃないか? そう思うと矢も盾もたまらず買いに走った。 結果からいってしまうと、アダルトが水面を歩く姿を撮影するときには、ほとんど使えないといっていい。前記した盗撮事件の影響もあったのかもしれないのだが、カメラ内臓の赤外線ライトが想像以上に弱かった。ライトが届く範囲は、せいぜい3メートルくらいまでだった。しかしこれはこれで、薄暗がりでの釣りシーンの撮影を助けてくれたし、日没後に足元近くを流下する生物の撮影や、ヒゲナガに関しては、アダルトが上陸してくるシーンや、上陸したアダルトの様子を撮影するにはうってつけだった。ナイトショットの欠点のひとつは画像がモノクロになってしまうところだが、もともと暗がりでは色がなくなるのがふつうだから、朝夕に割り切って使えば、今後も役立つケースはあると思う。
1997年に新しい自衛隊橋が完成し、そのすぐ下流にあった仮設橋の進入路を駐車場に、その脇にあった空き地にレストラン「いねや」が建てられた。自衛隊橋の前後はヒゲナガの生息数が多く、したがってハッチも多いところだ。うまい具合に、もともと橋の照明があるところに、夜になっても「いねや」さんの明かりが晧々としている。救世主の出現であった。 ためしに「いねや」さんの対岸でカメラを構えてみる。レストランの明かりを映して十分に水面は明るかった。あとは、できるだけたくさんのハッチが起こる日を待つだけだった。果たして1999年の4月末。「いねや」さん対岸の橋の下で三脚を立てて待っていると、それまでで最高のヒゲナガのハッチがはじまった。暗がりに強い液晶モニターにかじりつきながら、夢中でカメラを回し続けた。撮れた。ぼくは、それまでの会心の釣りに負けないくらい興奮していた。 |
フライフィッシング中毒
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最終更新日 : 2001/02/20
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