メイキング・オブ「忍野ノート・ビデオ版」

その8 PCでDV編集(下)

 2000年の夏は、とにかく汗だくだった。やっぱり忍野が禁漁になる10月からはじめればよかったかな、と何度思ったかしれない。毎日仕事が終わると、すでに大汗をかいているのに、もう一度部屋にこもって汗びっしょりになりながら撮り貯めたテープを見直して、これはと思うところをハードディスクに取り込む作業が続いた。

 これはこれでけっこう決断力のいる作業だった。いくら暑さにうだっていても、さすがに大雑把にこのあたりなら使えるという判断はできる。しかし、じゃあ具体的にどのコマからどのコマまでにするのか、となるとこれがスパッと決めにくい。いっそ短いシーンなら問題ない。きっちりと全部取り込んでしまえばいい。ところが、延々と長くカメラを回していた場合、これが困る。とりあえず全部取り込んでおけばいいのだが、根がケチであるからディスクスペースをついついセーブしたくなる。性分だからしかたない。結果として、この時点で編集の構想を練りはじめてしまうのだ。ケチな上にセッカチときた。しかしこれじゃあ、気持ちが先走るばっかりで、進むものも進まない。

 クロスディゾルブ(前のシーンのフェードアウトと後のシーンのフェードインが重なる場面切り替え)を考えて前後に余裕を持たせるのだが、それをどのくらいにするのか。シーンを全部使うのか、複数の部分を使うのか、どことどこを使うのか、どう組み合わせるのか…要するに「取捨選択に逡巡する、決断力のないダメなあたし」を何度も痛感させられたのだった。いやはや、夏休みに遊んでいたせいもあるが、我が部屋を時折涼風が駆け抜けるようになった9月になって、ようやくすべてのビデオ・クリップの取り込みを終えた。

 ところがである。ソニーの「DVgate」という取り込みソフトを使ったのだが、これにバグがあった。ただAviファイルとして取り込んだ段階では問題ないのだが、これをさらに編集ソフト「PREMIER」に読み込むと、最初のごく一部を除いて音声が消えてしまうことがあった。すべてに現れる症状ではなかったが、特に長いファイルには多く現れた。途中で症状の出るファイルを使って編集をしていれば気がついたのだが、あとの祭り。せっかく鈍い決断力に鞭打って取り込んだクリップのうち10以上が、冒頭部分を残して音声が消えていることがわかった。

 ソニーに問い合わせてみると、あっさりと修正ソフトの存在を知らせるメールが返ってきた。これをダウンロードしてからは、それ以後に取り込んだファイルからは、あたりまえだが症状は消えた。しかし汗だくになって費やした時間は戻らない。こっちは遊びの延長だからなんとか我慢できたが、これがプロの納期の決まっている仕事だったら、賠償を請求されてもしかたないんじゃないだろうか。所詮「VAIO」は素人のお遊び用の道具ということなのだろう。

 

 編集に入った段階から気になっていたことがふたつあった。BGMに使う音楽とナレーションである。著作権の絡みから、当然BGMは著作権フリーのものを捜さざるをえない。秋葉原に行ったり、ネットで捜してみた。使ったのは株式会社データクラフトの「音・辞典」vol2から1曲(オープニングに使用)、あとはすべて有限会社EXインダストリーの各著作権フリー素材である。ここの製品は価格もリーズナブルで種類も多く、使えそうな曲をたくさん見つけられた。とはいってもそれは、結局CDを5枚も購入してしまったせいでもあり、これにすべて耳を通すにはわりと時間がかかった。気に入った曲をピックアップしてしまえば、あとはシーンの雰囲気に合わせてうまく挿入するだけ。どちらかといえば楽しい作業だった。

 予想どおり最後まで決まらなかったのがナレーションだった。ネットで調べたところ、最低ランク(何を基準にしているのかは不明)のナレーターを使って、スタジオを借りて録音するとなると、半日で17万円かかるという。自分でナレーションをする決心をしたのは、これからだった。はずかしさなんて17万円には代えられない。

 自分でやってみて、ナレーションがどれだけむずかしいものかよくわかった。デジタル録音だから、いくらでも細工が効くだろうなどという考えは甘かった。第一、うまく話せれば、小細工など必要ないはず。それこそ時間の無駄で、ヘタにいじくるくらいなら納得いくまで何度も録音し直した方がずっと早いというものなのだ。であるのに、せっかちなせいもあって、原稿なしで、思いつきでナレーションを入れていたのだが、これは間違いなく言語道断なのだと思う。結果として、やり直しを増やしていたに過ぎないのだろう。

 長い語りでも、途中で切って繋げればいいと思っていたが、これがむずかしい。音程が違ってくるというか、素人がいつも同じ音程で話しはじめるには訓練が必要だと思う。話すスピード然り。どうも早すぎても遅すぎても聞き取りにくいというものらしい。

 マイクが悪かったのか、それともやはりスタジオじゃないせいか、結果として残響がどうしても気になった。ビデオテープに落とした段階では気にならないが、ディスク上のファイルを再生するとわかる。おそらく、DVD版など作ったなら隠せないだろうと思う。とにかく、四苦八苦のナレーションだった。

 

 「PHOTOSHOP」に慣れていたせいか「PREMIER」にはすぐに馴染むことができた。映像を取り込み、つないでいく。効果を考え、音楽やナレーション、テロップを入れていく。全体としては楽しみながらできたと思う。最後にいくつか小さな取りこぼしがあったが、これもセッカチな性分ゆえの自分らしさなのかもしれない。評価の方はご覧いただいた方々におまかせるとして、自分自身を納得させられるものは出来た、と思っている。

 最後に、このような遊びの延長のようなビデオ作品に、わざわざお金を支払ってご覧いただいた方々に、深く深くお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

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最終更新日 : 2001/03/11 .