Thinking 5
『個性のはじまり』


 個性なんてものはもともとはじめから無いのではないか。

 僕もこの歳になりどこまで心得ているか知りませんが、
人の苦しみ、悲しみ、傷み、喜び、悩み、怒りなど他人を
あらゆる角度で拝見して自分なりに考えます。自分が経験したことはもちろん、
経験していないことも自分に置換えて想像し考えるものです。
他人の心情を100パーセント理解できることは少ないですが、
ある確かなところは同情できることと思います。この確かなところとは、
人のあたりまえの悲しみや、喜びや、怒りのことです。
僕は人間性、感受性も個性だと感じているのです。
 この個性は想像もできないほど昔から受け継がれ、親から授かるものです。
生まれた後は親でなくともまわりの環境から個性を教えられ、
育まれ身につけていきます。そう考えたとき、個性というものも
人々の営みと同様、全体的に大きく絡み合ったもので、
皆つながれているような気がしてきます。そして何よりも重要なことは
個性をどう次の世代につなげていくかということが考えられるのです。
先ほどの悲しみや、喜び、怒りも複雑な心情ではなく、
本当の奥深いところは皆一緒な感性でなければならないと思うのです。
その確かな個性からはじまるものが、
この世界で生きる自分ではないでしょうか。

 
考えれば考えるほど、個性はやっぱり有るのです。
もし無ければとうの昔に人類は絶滅していたでしょう。
しかし人の心情の奥底まで覗くと個性の違いは差程なくなると思います。
普通に考えられている個性というものも間違いではありませんが、
人と違うことが個性ということではなく、似ていても結構…
たとえ何十億の人と同じ考えであったとしても自分自身で考えた答えならば
それは自分だけの素晴らしい個性だと言い切れるものが
個性のはじまりでしょう。人と違うことを考えるより
もっと自然なところで考えていけば
必ず自分の個性にたどりつけるものだと僕は信じているのです。

H.13.3.25

Copyright 2009 Taro Tomori